A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

 例年夏季(7~9月)を除き、三重県、全国ともに流行が見られる疾患で、人との接触の機会が増加すると罹患しやすくなります。
三重県では、2018年に(定点当たり年間患者数106.16人)から2019年(同92.58人)にかけて大きな流行がみられましたが、近年は小規模な発生にとどまっていました。2023年は秋口から流行が拡大し、定点当たり週間患者数としては過去最大規模となりました。2024年現在も高い水準で推移しており、引き続き注意が必要です。
三重県の2024年第19週 5月6日(月)~5月12日(日)の定点当たり患者数は3.87人となっています。
うがい、手洗いを励行し感染予防に努めましょう。
<保健所管内別定点あたり届出数>
 警報レベルを超えた場合、大きな流行が発生または継続していることが疑われる、注意報レベルを超えた場合は、大きな流行が発生する可能性がある又は流行が終息していな可能性が疑われます。これらはあくまで流行状況の指標であり、都道府県として発令される「警報」とは異なります。
報告数の過去5年間の報告数との比較
 本年の定点あたり報告数が、赤色折れ線を超えているときは、過去5年間と比較してかなり報告数が多いことを示しています。(過去5年間の平均:当該週とその前後の週の計15週の平均)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
  桑名 四日市市 鈴鹿 松阪 伊勢 伊賀 尾鷲 熊野
2024-05-02 0.68 0.32 0.55 0.08 0.23 0.34 0.50 5.22
2024-05-07 0.17 0.35 0.07 0.16 2.22
2024-05-08 0.07 0.28 0.11 0.44 0.59 2.48
2024-05-09 0.17 0.27 0.36 0.15 0.51 0.44 0.41 2.59
2024-05-10 0.16 0.21 0.40 0.17 0.39 0.43 1.11 2.05
2024-05-13 0.13 0.13 0.31 0.06 0.14 0.40 0.33 0.76
2024-05-14 0.68 0.17 0.21 0.41 0.33 0.35 0.88 2.95
2024-05-15 0.44 0.17 0.50 0.28 0.23 0.09 0.78 3.19
2024-05-16 0.50 0.21 0.60 0.21 0.98 0.64 1.24 1.30
2024-05-17 0.57 0.29 0.18 0.06 1.02 0.69 0.91 3.24
<学校等欠席者情報システムとは>
 感染症で欠席する児童・生徒等の発生状況をリアルタイムに把握して、学校(保育園)、教育委員会(保育課)、学校医、保健所等と情報を共有することができるシステムです。
 現在、公益財団法人 日本学校保健会により運営されております。
全国のA群溶血性レンサ球菌咽頭炎定点当たり患者届出数(最新情報)
国立感染症研究所のホームページより
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎って、どんな病気?
1 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは…?
 原因となるA群溶血性レンサ球菌は一般的によく見られるグラム陽性球菌で、多彩な臨床症状を引き起こします。感染すると通常 1~4日の潜伏期を経て、突然の発熱(38.5℃以上)と全身倦怠感、咽頭痛、嘔吐などで発症します。他の上気道炎に比べて咳や鼻汁は軽度ですが、咽頭、扁桃粘膜に著明な発赤を認めるほか、頚部リンパ節の腫脹が高頻度にみられます。特殊な病型として猩紅熱があり、軟口蓋の小点状出血あるいは苺舌がみられることがあります。合併症として、肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患、あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることもあります。
2 流行疫学
本疾患はいずれの年齢でも起こりますが、学童期に最も多く、3歳以下や成人では典型的な臨床像を呈する症例は少なくなっています。一般的に秋から冬にかけてが流行期とされていますが、感染症発生動向調査のデータから、春から初夏にかけても患者数の増加がみられています。近年報告数が増加する傾向にありますが、キットの普及などで診断技術が向上したことによる影響も考えられます。潜伏期での感染性については不明ですが、通常患者との接触を介して伝搬するため、ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときにおこりやすくなる疾患です。
3 予防と発生時の対策
治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬として使用されますが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応されます。また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤もリウマチ熱、急性糸球体腎炎など非化膿性の合併症予防のために、少なくとも10日間は確実に投与することが必要となります。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤も使用されることがあります。
 予防としては、うがい、手洗いなどの一般的な予防法の励行はもちろん、患者との濃厚接触をさけることが最も重要です。集団発生などの特殊な状況では接触者に対して咽頭からの菌検出を行い、陽性であれば治療を行う必要があります。
引用(参考)文献
感染症予防必携,財団法人日本公衆衛生協会